記事更新日【令和4年10月10日】
暗号資産を所有している人なら知ってはいるであろう、暗号資産のおかしな税制。
現在でもその異常な税制は変わることなく、暗号資産を保有している人たちに弊害をもたらしています。
中でも、2017年の年末に起きた「仮想通貨バブル」。
この時に、この日本のおかしな税制に苦しめられた人は、「億り人」以上にいたんじゃないかと思います。
おさえておきたい日本の暗号資産の税制のポイントは4つ
①年内分のみでしか損益通算ができない。
②暗号資産同士の交換や、買い物での利用も「利益確定」とみなされる。
③個人の暗号資産取引で生じた利益は「雑所得」に分類され、「累進課税」が適用される。総合課税にも要注意(※個人で運用していた場合であっても、暗号資産で得た利益で生活していることが明らかである場合には、事業所得となる可能性はあります。)
④利益の計算方法には「移動平均法」と「総平均法」の2種類がある。
この4つのポイントをおさえていれば、「暗号資産の取引したら税金で人生おわた・・」という状況は避けられます。暗号資産が気になっている方は、事前に学んでおくことを強くおすすめします!
解説に入ります。
①年内分のみでしか損益通算ができない。
まず1番におさえておきたいポイントがこれ。
投資や事業をしていない、いわゆる一般的なサラーマンの方はピンとこないかと思いますが、大切なポイントですので解説していきます。
(※「個人での暗号資産投資」前提で説明していきます。)
国は、個人が得た利益に対して「税金」という形でお金を集めています。
サラリーマンのお給料からも、いろんな税金が引かれていますよね?お給料も同じく、「個人が得た利益」だからです。
暗号資産売買による利益、株式売買による利益、不動産売買による利益・・など、さまざまな「利益」というものが存在しています。「得した分の、一部を国に頂戴ね。」これが、損益に対する課税。損益通算は、「得した」分から、「損した」分を引いていいよーっていうこと。
(※個人での暗号資産取引の場合、「雑所得」に分類されます。雑所得内でのみ損益通算が可能です。)
そしてその損益通算は、年内で得た利益に対して、年内に被った損益でしか相殺することができません。これは後の解説で出てきますので、頭の片隅に置いておいて・・
それでは次
②暗号資産同士の交換や、買い物での利用も「利益確定」とみなされる。
2017年におきた暗号資産バブル。この時に特に問題となったヤバイ税制の一つが、この「暗号資産同士の交換での利益確定」というものです。
『そりゃコインからコインとはいえ、儲かってたら税金かかるのはおかしくないよね?』とも思うかもしれませんが、なんせ法の整備が追い付いてなく、周知がされていない状況。
具体的にどこがヤバいのか?
例えば、1コイン1万円で買った100万円分のビットコインがあるとします。
購入後、価格が1コインが10円に値上がりました。リップルが欲しくなり、この時に1000万円の価値となっているビットコインを、円には変えず、全部リップルに交換しました。
その後、リップルの価格が下落。1000万円分あったリップルは、100万円となりました。
換金しても儲からないので、リップルはそのまま持つことに。そして迎える新年・・
税制を知っている方ならこうなります・・
ひぃぃぃぃっ!!なにやってんのーーー!!??(;’∀’)
順を追って解説します。
①ビットコイン100万円が1000万円になる。(この時点ではまだ課税されません。)
②1000万円分のビットコインを1000万円分のリップルに交換。(暗号資産同士の交換なので、この時点で900万円が課税対象となります。)
③1000万円分のリップルが100万円分の価値に下落。(900万円の課税対象に変わりはありません。)
・・・え?なんで??ってなりませんでした?
しかし、この場合には900万円が利益とみなされ、課税されるのが現時点の日本の税制なのです。
ただ、このパターンの場合には回避する方法があります!!
何らかの投資をしている方ならお気づきかと思いますが・・
年内に全額、リップルを売ってください!!!
すると・・
1000万円で購入したリップルを100万円で売った=損益900万円
となるので、ビットコインをリップルに交換したときの利益900万円と相殺ができます。
利益900万円ー損益900万円=利益0円・・という計算です。
※必ず年内に行う事。ここが最重要です!!
これが、先にお話しした「暗号資産の損益は年内でしか相殺できない」というポイントにもつながっていますね。
ICOはこれ以上に問題なのですが、この基本をおさえたところでその理由を解説します。
(知りたい人だけ読んでね)
まずはICOの特性から。
・上場前に安値で売られる、株式でいうIPO(未公開株)みたいなもの。
・円のまま送金したり、指定された暗号資産のコインで送金する。
・送金した先で、ICOコインに変えられ、購入者にコインが配られる。
・その後、暗号資産取引所に上場(すればまだいいんだけどね・・)
まぁ特殊ではあるけれど・・では一体これの何に苦しめられるのか?
苦しめられることになるパターン
・購入のために、持っている暗号資産を別の暗号資産に交換する。(暗号資産同士の交換なので、この時点で利益があると課税される)
・購入したICOコインが年内に配布されない。または、配布されても上場せず、交換する術がない。(=年内の損益通算ができない。)
この2つの条件がそろってしまい、なおかつその金額が多きく、手元の資金を超えてしまっている場合、「税金が払えない」という事態に発展します。
悪の根源ともいえるからくりはここ・・
・暗号資産同士の交換は利益確定となる。
・損益通算は年内の交換に限る。
どちらかさえ無ければ・・せめて損益通算が株と同じで3年とか猶予があれば、意味の分からん多額の税金からは逃れられた方が多かったはず。
今後注意しなくてはならないのは、「含み益への課税」ですかね。今のところ法改正はありませんが。
これにはさすがに、暴動が起きるでしょうね・・。
それでは次
③個人の暗号資産取引で生じた利益は「雑所得」に分類され、「累進課税」が適用。総合課税という点にも要注意。
累進課税ってなんぞや( ゚Д゚)?という方は、こちらの表をご覧ください。↓
会社からお給料をもらっている方には、もれなく累進課税が適用されいています。
暗号資産にも、この累進課税が適用され、更に「総合課税」の対象となる他の所得と合算して税率が確定します。
これの何がヤバいの?・・と思われる方に、もう少し解説していきます。
年収400万円のサラリーマンが、暗号資産で1000万円の利益を出したとします。
(控除うんぬんがあるので、年収400万円で、課税所得は300万円としておきます。)
累進課税は、控除を差し引いた分に課税されるので、課税所得が300万円とすると、税率は10%に当てはあります。住民税と合わせて20%。
ここに、暗号資産で得た1000万円の利益がどーんと追加されます。
給与の課税所得300万円+暗号資産の利益1000万円=課税所得1300万円
となります。
となると、先程の10%であった税率は適用されなくなり、課税所得1300万円で税率を出すことになります。1300万円の所得税率は、33%。さらにここに住民税が加わるため、税額は合わせて43%にもなります。これが、総合課税&累進課税のおそろしいところです・・。
④利益の計算方法には「移動平均法」と「総平均法」の2種類がある。
ざっくり説明すると、、
・移動平均法=売買の都度、計算
・総平均法=1年分をまとめて計算
という2つの計算方法があり、売買の頻度やタイミングによって、計算方法を変えることでその年の利益額が変わることがあります。
計算は非常に複雑な場合が多いので、手計算は厳しいです。
(※税理士さんにお願いするか、取引回数が多い場合には、計算ソフトも活用しましょう。)
ここでやっかいなのが、この計算方法にかかる法律。
この計算方法には定めがあり、どちらかの計算方法で申告するかを決めなくてはなりません。更に、その年分の確定申告期限(翌年の3月15日)までに税務署への届出が必要です。
(※2019年分(2020年に申告する分)からは、届出をしていない場合、「総平均法」での評価方法となります。届出の有無に関わらず、ここで決まった評価方法は向こう3年間変更することができません。)
「ふーん。で?なんか変わるの??」・・ですよね^^;
ここらの計算は私にはさっぱりなので 笑
計算の中身は置いといて、我が家の実体験から簡単にお話します。
・2017年分から、暗号資産の利益の確定申告あり。(過去分は評価方法の届出をせず、「移動平均法」で確定申告済)
・2021年、暗号資産を売却。
・2017年末、税務署に確定申告についての相談に行く。
→評価方法に関する法律の存在を初めて知る・・。
法律の存在を知らなかったばかりに、評価方法に悩まされることになります。
加えて既に申告分の確定申告のやり直し・・。
結果・・
・2018年分までの暗号資産の利益は「移動平均法」のまま。
・2020年に評価方法の届出をしていなかったため、2019年分から評価方法は「総平均法」。(3年間変更できない)
となりました。
我が家はICOをやっていたり、複雑に取引を重ねていたので、cryptactという損益計算ツールを使用しています。
この計算ツールで評価方法を選択できるのですが、評価方法を「移動平均法」から「総平均法」に変えるとあらビックリ・・
過去分の利益が膨れ上がりました!(◎_◎;)
・・みたいな事態が起きたので、よく比較してから決めることをおすすめ致します(^^;;
まとめ
・損益が出せるものは、年内に売って利益と相殺させる。
・購入した暗号資産を別のコインや物などに変えても、利益確定となる。
・課税の分類は「雑所得」「総合課税」「累進課税」。
・評価方法には「移動平均法」「総平均法」の2つがあり、評価方法により結果が異なる。
・評価方法の変更には届出が必要であり、3年間変更ができない縛りがある。
以上の5つを把握しておけば、暗号資産はそれほど怖いものではありません。
買って放置するだけであれば、税金とは無縁です。